アニメ「幼女戦記」の感想

おすすめ度 9点(10点満点)
Netflixで視聴。原作未読。

タイトル詐欺

これほどタイトルのイメージと内容が異なる作品もない。このタイトルで視聴しようと思う人はほとんどいないのではないだろうか。

Netflixのおすすめに頻繁に浮上していたが、「幼女戦記」の文字と絵柄のせいで無意識のうちに避けていた。しかし、劇場版が昨年(2019年)に公開されていたことを知り、うっかり再生ボタンを押してしまったところ、気づけばあっという間に全話視聴し終わっていた。

登場人物はほぼおっさん

序盤中盤終盤とむさ苦しいおっさんが延々と登場する。主人公は正真正銘の少女(幼女)だがおっさんでもある。すなわちほぼおっさんだ。

レギュラー出演陣の中では、主人公の補佐に付く隊員1名が唯一の女性キャラだ。しかし紅一点のポジションながらヒロインを張るような描かれ方もされていない。主人公はというと、論理的で冷静さを保ちながらも、手段を選ばない点で狂気じみた側面がある。萌えだのハーレムだのは一切出てこない。

内容

舞台は、我々の知っているヨーロッパとさほど違いのない、1900年代初頭がベースになっている。辿っている歴史も恐らく似通っていて、第一次世界大戦と第二次世界大戦がひとまとめに起きたような状況に直面している。そういった架空戦記モノだ。

したがって現実世界の史実をある程度知っていれば、突っ込みたくなる部分も増えるだろうが、主人公が置かれた状況をいち早く掴むこともできるだろう。近代世界史が記憶に残っている人はより楽しめるはずだ。

魔法

本作は「魔術」が実在している世界となっている。ただ、この魔法は科学的な側面から捉えられた利用のされ方をしていて、その点が物語が空中分解せずに済む要因の一つになっている。

魔術が存在することによって、視聴者へ「何でもありだ」と宣言する一方で、科学的なアプローチを見せて、ある程度は「体系化」されているということを示す。自然に世界の成り立ちを補強していると感じた。

作中での魔術の兵器への利用用途としては、火力や推進力の高出力化がメインのように見える。イメージとしては「火薬」や「燃料」に近い。

私達にとって一番魔法らしい利用のされ方としては「バリア」だろう。その他には映像の記録や通信にも用いられているような描写があるが、劇中ではさほど詳細には触れられていない。

戦闘描写

戦闘描写は泥や暗雲を背景に血なまぐさい展開になるのだが、「魔術」によって人が航空機と同程度かそれ以上の機動性を有しており、空中戦となると一転して非常に切れ味鋭いものになっている。本作のビジュアル的な見せ場はこの戦闘部分になる。あとは音響効果も素晴らしい。

何が面白いのか

簡単に言ってしまえばやはり「主人公が冷徹で狂気じみた判断力と、化け物のような強さを持っている」という点に尽きる。

単にこれだけのギミックであったなら陳腐になるのだろうが、本作はいくつかの仕掛けによって自然と物語へ引き込む事ができている。その意味で2話、3話は大変うまく出来ている。「中身がおっさんである」という機構のおかげで、視聴者が違和感を感じる回数が減る。

見た目がおっさんのままで狂気じみていると、視聴に耐えられない醜態になる可能性があるので、非常に上手い組み合わせだと感心する。

また、有能故に組織での処世術も相まって活躍の場が与えられ、ひいては現実世界の史実をなぞったように戦争に巻き込まれていく様は、こういった架空戦記モノの醍醐味なのではないだろうか。

端的に言えば結局は「俺TUEEE」なのだが、準備された根拠と世界設定、ストーリー展開、アニメーション表現など様々な細部が適切に用意されていれば面白くなるしかない。

おわりに

本作からは、戦争と平和や、神と信仰や、合理性のあるべき形などいくつかのエッセンスが提示されるが、これらを強く受け取ってしまうと、おそらく純粋には楽しめないのではないか。

戦史系やミリタリー系に馴染みがない方は、Netflixの日本語字幕付きで視聴したほうがいいだろう。所属や階級などが多少は理解しやすくなるはずだ。

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