アニメ「氷菓」の感想

おすすめ度 5点(10点満点)
Netflixで視聴。原作未読。TVアニメシリーズのみ。

推薦文

1話で面白いと感じた方は見続ける価値がある。
1話で苦痛と感じた方はそれはしばらく拭えない。

はじめに

私は後者となった。そしてこの作品は私にとってとても判断しにくいものとなった。Amazonレビューでの高評価に驚き悩むあなたは私の仲間である。

本作はAmazonのレビュー評価が恐ろしく高い。「評価の高いものから見てみる」という、主体性の無い、いつものお決まりのパターンで視聴し始めたが、序中盤は苦痛さえ感じてしまい幾度か視聴を中断していた。それでもアニメーションの完成度の高さのせいか、終盤は苦痛はあまり感じずに一気に視聴した。

これまでAmazonのレビュー評価と自身の評価とでは多少の違いはあれど、大きくズレることはあまりなかったが、本作は真逆に近い印象だ。

あのような場は場所自体に強くバイアスが掛かりやすいが、これほどまでに乖離がある作品は「氷菓」だけといってもいい。

※次点で「この素晴らしい世界に祝福を!」も氷菓ほどではないがレビューとの差を感じた作品だった。

私が本稿を書いた動機の大部分が「Amazonレビューとの差が何なのか」という思いにある。

簡単に言えば、折木奉太郎と千反田えるが「好みか、好みでないか」で意見が分かれるのではないだろうか。 主人公二人を過度に毛嫌いせず冷静に作品を見渡すと、おもしろい部分もいくつかあるからだ。よって評価が難しい。

折木奉太郎について

折木奉太郎は超低カロリーを行動規範とするいわゆる「ヤレヤレ系」だが、2020年から見たせいだろうか、今となってはすぐにでも思いつくような、どこか見覚えのあるありきたりな設定だ。そのせいか若干鼻につく感はある。

ヤレヤレ系がうまく機能するためには、運命や構造として何かに巻き込まれるか、とても熱量の高い他者に巻き込まれる必要がある。

「涼宮ハルヒの憂鬱」はその典型例でお手本かもしれない。本作の場合は千反田の「私、気になります」が主な契機となっていて、これではやや弱い。折木のヤレヤレ具合もなかなかの筋金入りのため、所々で物語が駆動するのに少々手間がかかっている。

この部分を、繊細で丁寧と見るか、退屈で何も起きてない部分と見るかでも意見が分かれるのではないか。 私には五分五分に感じた。

事件に巻き込まれる導入が弱いと、解決への動機も弱い。当然オチも弱くなってしまう。話の中身も些細な出来事が多いので、物語として相当の完成度が要求されるはずだが、すべてうまくいってるいるとは言い難い。

制作側もそれがわかっているからか、「私、気になります」の部分は決め台詞として用いられ、演出が極端に強めになっている。「契機」をストーリーとして用意できない分、演技と演出で用意した格好だ。

この狙いはある程度はうまくいっているが、全体としてはやはりどこか物足りない。

千反田えるについて

千反田えるはこれでもかというほどに、実直さと無垢さと無自覚さと可愛らしさを煮詰めたようなキャラクターで、ファンの方には申し訳ないが、「度が過ぎると逆に下品になる」という好例かもしれない。狙い過ぎとでもいうべきか。

ちょっとした笑顔の表現でさえ、髪や表情の細部まで動き、目はうるうるで煌めかせてドアップの構図になる。そしてキスすれすれの至近距離まで近づく。

アニメーションとして技術的には素晴らしいが、内容と釣り合っていないとも言えるし、色々な方面へ媚びすぎているとも言える。私には拭えない嫌悪感が残ることが多かった。

自主制作のミステリー映画の話は、途中で多少面白くなるのだが、何故かと振り返って考えると千反田えるがあまり登場しないからだとわかる。そして動機ある人物が何人か登場したり、動機が吹き込まれてるからだとわかる。

ここまで毛嫌いする必要はないはずなのだが、そんな人は極少数か私くらいのものなんだろうと思う。

内容

本作はミステリー仕立てでありながら殺人や凶悪事件などを避け、 日常に潜む些細な出来事をあえて扱っている。この分野が難しいのは想像できる。

些細な出来事についてミステリー作品のように推理パートを扱うと、最終的な結論はどうしても面白みに欠けてしまうし、当事者間に大きな利害関係がないので緊張感も動機も発生しにくい。

ミステリー部分はおまけであり、人物についてフォーカスできればいいのだろうが、私は主人公二人にあまり共感できなかったので、最終話を除き、本作ではそういう楽しみ方が出来なかった。

他作品との比較

本作を乱暴に説明すると、「家のミカンがこつ然と消えた。誰が食べたのか」という事を、情報が遮蔽された部外者数名で推理し、最終的に折木が答えにたどり着く。という流れになる。

元の話の部分、この場合「ミカンの話」を上手く仕上げないと釣り合わない。本作はミカンの部分がやや弱く肩透かしとなることが結構ある。氷菓編やバレンタインの話は惜しい。最終話は上手く出来ていて面白い。

「夏目友人帳」や「異世界食堂」はミカンの部分が高いレベルにあるため、レギュラー陣の機微をより際立たせている。したがって視聴後の余韻も大きいのだと思っている。

※夏目友人帳は利害関係が明確で緊張感もそこそこあるので比べてしまっては不公平かもしれない。異世界食堂も「異世界」が一枚噛んでいるためこちらも比べては不公平かもしれない。

アニメーション

アニメーションは素晴らしい。風景や人物は持て余すほどになめらかで美しい。顔の表情や感情の表現なども恐ろしいほどに繊細だ。

この作品を京都アニメーション以外が手掛けたら、相当につまらない物になっている可能性がある。逆にここまでの作品に引き上げることができた京都アニメーションの力量が驚異的だったとも言える。

おわりに

この主人公二人が気に入ってしまえば突然面白い作品になるはずだ。また謎解きの結果について拍子抜けしないのであれば、ミステリーとしても楽しめることになる。

アニメーション表現は折り紙付きなので、人物と物語に違和感がなければ、全ての色彩や景色や表情が色づき、物語が躍動して見えるはずである。すなわち大傑作であると感じるのではないだろうか。

おすすめ度の説明
0~3:不快に感じることがある 視聴の継続が難しい
4~5:退屈に感じることがある 暇なら視聴できる
6~7:面白いと感じる 一気に視聴できる
8~10:個人的な好みの領域

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