2017年のチーム成績でみる横浜DeNAベイスターズの改善点

2017年のチーム成績から横浜DeNAベイスターズが来年リーグ優勝、もしくは現状維持以上の成績を残すためにはどこが改善されればよいかをチーム成績から素人なりに考えてみる。

改善点

盗塁数(リーグワースト)

単打や四球一つがいきなり得点圏のチャンスに変化する重みは計り知れない。少ないチャンスや好投手から得点をもぎ取る手段として非常に重要になる。従って贅沢を言えば盗塁数を増やしたい。

ただ、盗塁数と優勝や得点との相関はそこまで強くないことも確かだ。セイバー的には盗塁成功率が7割を超えないと有効な戦略とならないからである。それ以下では得点確率としては企図しないほうが懸命ということだ。

実際、シーズン後半は盗塁成功率が9割近い梶谷隆幸選手しかほとんど企図させていない。ちなみに桑原将志選手は盗塁成功率が5割なので、絶対に企図しないほうがいいということになる。5割ではどんな監督だとしても現状の桑原選手に盗塁の許可は出さないだろう。

従って、具体的な目標としては盗塁成功率7割が最低ラインだ。7割以上であればやればやるほど得点力はアップする。それを目指しつつ企図数を増やしていきたい。

これは残念なことに新任の監督の殆どが口にすることでもあり、ほとんど達成されることもない目標になる。ただここで言う盗塁に対する指摘は「人並みに増やしたい」という、だいぶ控えめでささやかな願いとなる。リーグワーストでは優勝へは険しいはずだからだ。

四球数(5位)、出塁率(4位)

全員積極打撃がチーム方針なので四球が少ないのは仕方ないが、どうしても出塁率が悪く、その時々の打てない打者でアウトカウントを増やされ攻撃終了となりやすい。相手投手の球数も少なく済むため、理想的な継投に持って行かれやすい。また盗塁と同じように四球が選べないと好投手には手も足も出ないという状況になるはずだ。したがって四球を選びたい。当然チーム打率が上がることに越したことはないが、より現実的な選択肢としては出塁率の向上を目指すことになる。

与四球(リーグワースト 敬遠含む)

無いはずのチャンスを与え、不必要にチャンスを拡大させてしまい得点を奪われやすい。また先発投手の場合は投球数もかさむため早い回での降板が多くなり、後続の救援投手に負担がかかる。

救援防御率※2(4位だが5位中日とほぼ同じ)

逆転負けや先制された場合にそのまま負ける確率が高くなる。決定的な追加点を許し敗戦する。

※2.ここを参考にした。データで楽しむプロ野球:http://baseballdata.jp/c/

改善手段

打者の四球数

どれも簡単に改善できるものはないが、打者の四球数は他の項目に比べれば改善しやすい。その気になれば作戦指示として出すだけだ。追い込まれるまでボールを見ていく打席を増やせばいい。ただ、現在のチーム方針とどのように折り合いを付けるかは難しく、本稿では直下で後述するOPSでの閾値を考えてみたが、果たしてそれがうまくいくのか、精神衛生上問題ないかはわからない。選手によっては本来の打撃成績に悪影響がでる可能性もある。

積極打撃が推奨されるのはOPS.8以上の打者あたりではないかと見ている。それ以下の打者は四球を視野に入れながらの打撃の方がチーム貢献度は高まるのではないか。

これは筆者の素人勘でしか無い。ただ毎年のOPSランキングを眺めているとそのあたりにまるで川でも流れているかのうような溝(閾値)がある。他の指標でソートしてもこれほどくっきりしたラインは見えてこない。

OPSの算出に四球が入っているのである意味循環参照になっている面があるが、OPSの便利指標っぷりからしても有効な判断基準足り得るのではないかと素人判断した。

循環参照部分に焦点を絞っていうなれば「四球を多く選んでいる人は四球を狙わず積極的に打ちに行くべき」となりやや意味不明だが、長打力があって選球眼のいい打者でないとOPSは上がらないので、そんな打者が積極的に打つことは基本的に好球必打となる。

彼らはボール球が来れば単に見送り、四球を選ぶつもりがなくても勝手に四球になる確率が高い。ボール球を見送るという信頼があるので積極打撃を行っても悪影響がないという言い方ができる。なにより長打力があるので、四球より大きなチャンスを生み出す可能性が他の打者より高い。

逆側から言えば、OPSが低い打者は長打力がなく選球眼もない打者となり、そんな彼らには打つよりも積極的に四球を狙う合理的な理由となる。またOPS0.8以上としたのは前述の通り筆者の勘なので、数学的に誰か計算してくれたらありがたい。やり始めたら複数の仮定を導入せざるを得ず結構面倒なことになるが、ある程度納得の行く値も出るはずだ。

盗塁数

盗塁数について改善するのなら新たなコーチの招聘が絶対に必要だろう。現在の横浜のコーチ陣に盗塁経験の豊富な人材が(2軍も含め)皆無なためアドバイスのしようがない。非常に専門性の高い分野でありながらコーチ陣にいないのは、元から重視していないことの表れだろう。もちろん足の速い選手がいなければ、コーチがいくら技術を持っていようがコーチの足が早かろうが盗塁数は増えないが、自ら攻撃のオプションを減らすのは得策とはいえない。

なにも盗塁王を取るような選手を育てることが至上命題と言っているわけではない。「走る野球」を標榜する必要もない。もちろん盗塁王がいるに越したことはないが、代走の選手に一人でも盗塁が出来る選手がいてもいい。横浜にはいないのだ。そのためにはやはり技術的な裏付けをもって盗塁を立案するコーチが必要だ。

横浜は上述の通りそもそも盗塁を重視してないのだが、やりたくても「やり方がわからない」と言った方が近い。ノウハウがなく改善点がわからないため、盗塁に失敗した場合に前向きになりようもない。コーチ陣に盗塁経験が豊富な人材がいなければ、相対的に選手個人の責任も大きくなってしまう。これでは首脳陣も選手自身もますます企図自体を見送ることになる。

ちなみに盗塁数がダントツの広島は、現コーチ陣に3年連続盗塁王経験者が二人もいる。監督の緒方孝市氏と石井琢朗氏(元横浜)で、緒方氏が95~97年で石井氏が翌98~00年盗塁王になっている。横浜にとって石井氏の晩年の放出は非常に痛手となっていると見ていいだろう。特定のノウハウを持った指導者が残る可能性が高ければチームカラーとして受け継がれやすく、それが長く続けば伝統となる。

投手の与四球数と救援防御率

投手陣のステップアップについては恐らく優勝に一番重要な要素になるが、与四球数も救援防御率についても改善手段は素人ではちょっと思いつかない。これは打撃に置き換えれば、「打て」と言っているのとほぼ同義なので、何か戦略や作戦として一朝一夕に解決できる部分ではないからだ。個人の資質に依る部分が大きい。

かろうじて配置転換くらいが思い浮かぶが素人には大したプランは思いつかない。どちらも現実的な選択肢といえば人材の確保で、ドラフトやFA、トレードや外国人選手の獲得になる。

FAでは涌井秀章選手と牧田和久選手のどちらも魅力的だが横浜は名乗りを上げるのか注目だ。野手と違い、良い(非外国人枠の)投手は何人いても困ることはない。直接中継ぎ投手を獲得してもいいし、先発投手を獲得して適正のある人物を中継ぎに配置換えしてもいい。

湯水のように金が使える球団ではない限り、編成部門は基本的に中長期的な視点にならざるを得ず、このへんは現場やファンとの折り合いを付けるのが難しいところだろう。それでも近年は毎年投手の即戦力の獲得に成功していて、二年連続Aクラスに居るのは紛れもなく彼らドラフトの成果で、出来すぎていると言ってもいい。

他球団で気になった点(余談)

中日

中日の打者の四球の少なさが一際目立つ。広島や阪神と比べると200安打分も損をしていることになる。これはとてつもない数字で相手投手への負担が非常に軽いことが伺える。ナゴヤドームという球場の性質とも反するため、中日としては確実に改善しなければならない項目のひとつになる。

広島

広島の犠牲フライの多さも目立つ。これは犠牲フライを打つ人が素晴らしいというよりも、犠牲フライの機会が多いということだ。犠牲フライを打つためには少なくともワンアウト以下でなければならない。そして走者が既に2塁か3塁にいる必要がある。少ないアウトカウントでチャンスを多数迎えている証左で、盗塁の多さがそのまま現れている。非常に効率的な得点をしていることになる。

具体的には、ノーアウトから単打や四球で出たランナーが盗塁。犠打やセカンドゴロの間に3塁へ到達してワンアウト3塁。ここで犠牲フライとなれば相手チームにとっては最悪だ。場合によってはノーヒットで簡単に失点する。これは相手が好投手でも可能な点のとり方となる。

ヤクルト

ヤクルトはどうしようもないことが伺える。真中氏には気の毒なシーズンだったとしか言いようがない。素人の愚かな邪推になってしまうが、人工芝や建築基礎の見直しくらいやってもいいのではないだろうか。

巨人

巨人はやはり併殺数の多さだろう。併殺打についての改善はなかなか難しい問題が多い。まず右打者はどうしても併殺打が増える。足の速さでは補えないくらいの差がそこにはある。打撃後の体勢が進路と逆なのでバッターボックスの距離以上に不利で、毎シーズン併殺数の上位者にはズラリと右打者が並ぶ。

また、基本的に好打者は併殺になりやすいのだ。打球速度が早ければ早いほど併殺になりやすいからだ。今シーズンの併殺数の1位2位は首位打者争いをした宮﨑敏郎選手とマギー選手であることからも併殺の持つ「仕方無さ」が伺える。

俊足であったり全力疾走することである程度減らせるが、右打者には限界がある。今シーズンも山田哲人選手は併殺数の上位だし、トリプルスリーを達成した昨年(2016)も3位の16併殺を記録している。歴代の併殺記録を見ても右の強打者が名を連ねており、その最たる例が長嶋茂雄氏や落合博満氏だろう。

それでもどうしても併殺数を減らすとするならば、左の打者を増やすしか無い。巨人の併殺上位者はマギー選手(20)、長野選手(17)、坂本選手(16)、村田選手(15)、阿部選手(13)、小林選手(12)と続く。カッコ内が併殺数。右打者が多い弊害がもろに出てしまっているため、チーム編成としてもオーダーとしてももう一度総合的に見直す必要があるだろう。ちなみにこの観点からすると陽岱鋼選手の獲得は巨人にとってあまり良くなかったといえる。右の打者を獲得することは得策ではないし、既に彼は盗塁はもとより全力疾走があまりできなくなっている。

阪神

面白いのは、阪神と巨人は打率と防御率がどちらもほぼ同じだということろだ。2017-10-04時点で両チームのゲーム差は5.5。これが誤差なのか有意差なのかは分からないが、少なくとも阪神は巨人より上手くやったと言えるだろう。

感想

今年上手く行っていたことが来年継続できるとは限らない。今年ダメだったことが突然改善することだってある。毎度のことながら何が起きるのかわからないのがスポーツの面白さだ。成長する選手、後退する選手、彗星のように現れるニューヒーローから、怪我などにより離脱する選手、すべての球団でなにかが起こる。来シーズンも他人のことで一喜一憂する実のない充実した時間を過ごしていきたい。

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