ガールズ&パンツァー劇場版の感想

まえがき

各所で話題となっていたので、まずAmazonプレミアムでTVシリーズ全話とOVA(アンツィオ戦)を一気に視聴しました。予備知識ゼロでの全くの初見でしたがあっと言う間に引きこまれて「なるほどこれは良いものだ」となり、その翌日に即映画を見に行きました。その後TVシリーズなどを数周して劇場版をまた見に行くという流れでした。

劇場版の方は面白いか面白くないかの二者択一で言えば当然「ガルパンはいいぞ」ということになります。ただ私が勝手に残念がっている部分がありますので「そういう人もいるんだ」というくらいの温度で見ていただければありがたいです。

3回見に行きました

劇場版1回目の視聴時は、面白かったですし楽しかったのですが、私が勝手に期待していた方向とは違ったのか若干肩透かしを喰らった印象でした。2回目は「もう一度見れば手放しで絶賛されている意見に自分も賛同できるのでは」という期待を持ちつつもやはり叶わず、3回目は「見落としなどがないかな」という思いで若干作業的に鑑賞しました。確かに情報量は多いので複数回見たいなとは思わせるものですが、TVシリーズとOVAの出来には及ばずといったところです。一方で「面白かった」というのも正直な感想です。

良かったところと惜しいなと思った部分

まずは良かったところ。後半の一連の戦車戦は流石です。早くて理解が追いついていない部分がありますが、細かな点はBDの発売を待ちたいところです。そして言うまでもなくラストの2対1の戦闘シーンは圧巻でした。TVやOVAの各名シーンに引けをとらない迫力ある映像とカットの連続です。欲を言えば島田愛里寿がボコに気を取られる演出は別の人物による捨て身の作戦や乱入などにしたほうが物語としての深みが増したでしょう。当然ボコのシーンはあったままでもいいですが、後述(下記の代替案)するような展開と同居させることもできるので惜しいなと思いました。

また、OVAのカエサルとカルパッチョのような敵対チームとの戦車内部の描写も含めた戦闘シーンも欲しかったところです。というのも相対する戦闘シーンは多いのですが、大学選抜チーム側の人物描写をほぼしていませんので、TVシリーズなどでは上手くはまっていたスポーツ漫画のような熱い展開に持っていけていない印象です。ただ大学選抜チーム側の人物描写は時間的に難しいのかもしれません。その上、大隊長である島田愛里寿がそもそも12,3歳の天才という設定なので人物像の深みを出しにくかったと思います。

ボコに気を取られる演出の代替案

「ボコに気を取られる」の代替演出候補としてはカチューシャ、逸見エリカあたりが戦闘中に入ってくるのがわかりやすいでしょう。劇中でも30両中でカチューシャ、エリカ車は最後まで残っている数少ない車両です。制作陣からも寵愛されていると言っていいでしょう。大詰めで大学選抜チームの副官をどうにか1両撃破する見せ場を作っていますので、活躍の場を与えたかった人物だったのは間違いありません。しかしそれでも個人的にはどこか物足りない感じがしました。

本編のシナリオの展開とはだいぶ異なりますが、大学選抜チーム側の人物像の掘り下げができていたなら、味方大学選抜チームの誰かが勢い余ってペパロニ的に「足を引っ張る」や、何らかの理由で勝利に執着できない瞬間が発生するなどでもいいかもしれません。

ボコ代替案:カチューシャプランの場合

ノンナはカチューシャに「必要な人だ」といい、その他の生徒もみなカチューシャを守るために戦場で散っていきます。したがってカチューシャがプラウダ校で唯一残るというシナリオが最後の場面で活かしやすかった筈です。ですので最後の場面に割って入っていける流れがあればさらに面白かったのではと思います。尺も中盤それなりに使って描写していたので尚のこと話を組み立てやすい人物です。また、ともすれば幼児的な面が目立つカチューシャですがプラウダ校の隊長を務めているという片鱗を魅せつけ、放漫な側面を覆し自己犠牲的な一面をちらつかせて涙をさそうようなチャンスでもあったように思います。「この私がやられるわけないのよ」と。もしくは放漫さを全面に押し出したまま、自信満々で少しドジるも結果的に功を奏すというシナリオでもいけそうです。この後者の場合はギャグ要素として泣き笑い的に挿入できたかもしれません。

ボコ代替案:逸見エリカプランの場合

西住みほとの黒森峰時代からであろう確執をひっくり返すというある意味お約束のカタルシスはシナリオとしてもっと劇中で積極的に利用すべきだったと思います。エリカが勝手にライバル視しているみほへの複雑な心境をとりあえずは忘れて、もしくは戦闘の中で「これが西住みほの凄さなのか」という軍神の片鱗に触れて「みほのような才能はないが自分にできることは何か」といったエリカなりの葛藤や清算を経て、勝利に貢献するというストーリーは物語の厚みをもたせてくれるはずです。TVシリーズの蓄積があるのでそんなに大きな前振りも必要がない点も都合が良さそうです。さらに西住まほへの強烈な忠誠心と合わさると、劇中で大きなインパクトをもってクライマックスを構築できたと思います。「まほを助けたいが助けるためには自ら身を挺して、あまり認めたくないみほを援護しながら犠牲になるしかない」ともなれば面白かったのではと思いました。「勘違いしないでよね。隊長(まほ)を助けたかっただけだから」のようなアニメ的テンプレートも持ってきやすいですし、そこにまほからの感謝の言葉が得られれば視聴者の心はより動くものになったでしょう。TVシリーズ最終話で間に合わなかったエリカが今回は間に合ったという流れは誰もがわかりやすいものになったと思います。主役を喰ってしまう可能性もあるのでやり過ぎかもしれませんが。

良くなかったところ

前半のエキシビジョンマッチが冗長だったと思っています。もう少し言うとエキシビジョンマッチ自体はいいのですが、後半への伏線やもう一段深く人物描写を交えても良かったと思います。もちろん新キャラの説明パートとしてや、優勝後の後日談としてや、ダージリン様成分の補給としては役割を果たしていますが「もったいないな」という思いが残ります。様々な事情で大洗の街を壊す必要があったかもしれませんし、それはそれでよかったのですが、このパートを後半で上手く活用できた部分はあまり無かったように思いました。

この前半と後半の引っかかり具合が弱いために、出来事はめまぐるしく展開しますが、人物の成長や心の機微を上手く散りばめることが出来ず、消化不良といいますか、消化すべきものがない状況になってしまっている気がします。殲滅戦の車両の消化が中心になってしまったとも言えます。加えて中盤の非戦闘パートも後半への布石としてはあまり効いていません。疎開先の大洗チームの描写が後半の戦闘パートとあまり結びつきがありません。風紀委員とアリクイさんチームはわかりやすい展開をしましたが、コミカルパート止まりで物語のキーには成り得ておらず厚みのあるシナリオにはなっていません。またサンダースが戦車を預かるくだりでは戦車が一瞬で戻ってくるので、物語の起伏として下げて上げる展開として構成的にもやや微妙です。このあたりも練りこまれていない印象を受けました。

全体としての感想

ひとくくりでこの映画を言うなれば「ご褒美回」という感じでしょうか。根っからのファンや急造のにわかファンである私も含めて、お祭り騒ぎしてドンパチやってくれるだけで一定の満足感は得られてしまいます。それほど各キャラクターが映画の前段階でこれでもかというほど既に立っていますし、派手さを重視してはいますが戦車戦はやはり素直に面白いわけです。とくにTVシリーズをリアルタイムで見ていた人々にとっては、彼女たちが、戦車たちが「帰ってきた」という感慨もひとしおでしょう。

当然成長物語や人物の掘り下げを映画としてやるには難しい面も多かったのかもしれません。まず何しろ登場人物の人数が多いので掘り下げ方や対象を慎重にしないと話の焦点がぼやける可能性があります。ただ上でも少し述べましたが、OVAで初出の敵チームキャラクターと味方チームキャラクターの個人(カルパッチョ&カエサル)についてうまく掘り下げをやっていますので、映画でも出来たのではと思う部分もあります。もしかしたら映画という媒体ゆえに最重要キャラ以外に焦点を当てにくかったかもしれませんが、主人公姉妹以外にももうちょっと掘り下げが欲しかったと思いました。

手軽な人物描写の掘り下げ方としては戦車技術の練度向上なわけですが、TVシリーズとは違いすでにアリクイさんチーム以外は戦車初心者ではなくなっているわけです。練度や精神面でも一定水準に達してしまっていますので、わかりやすい成長の余地はあまり残されていません。そのためOVAのように描写としてどうしても一工夫必要(すなわち尺が必要)になってしまいます。劇中で大洗の生徒の中でわかりやすく成長したチームはやはりアリクイさんチームでしたので、その辺りの描写が難しかった、もしくはその部分に力を振り分けていないということが感じ取れます。次点でアヒルさんチームが知波単学園を率いる辺りでしょう。

あとがき

逆に言えばTVシリーズとOVAの人物描写が際立っていたと感じます。各人物、各チームごとに成長を描き切ったという凄さは何度見ても感心するばかりです。そのため余計に映画に対する期待値が上がっているため、私の望みとは方向性がやや異なっていたように思います。そこは仕方がありません。私の望む方向性のほうが異なっていたと言うべきでしょう。

劇場版のBDが発売されて何度か見るうちに見落としなどに気づいて、満たされることがあるかもしれないと楽しみに発売を待っています。

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